5. チタンは強い

5. チタンは強い
チタンで作ると、小さく、軽く、薄くできる。

▷ チタン合金の比強度は実用金属中、最大
「チタンは強い」といいますが、それは純チタンとチタン合金で分けて考えなければなりません。
(というか、強度以外の問題でも純チタンとチタン合金は分けて考える必要があるんですよね。)
はっきり言って、この両者は別物です。

純チタンは JIS 規格でその含有成分量(主に酸素含有量)により4種類に分類されています。
簡単に言ってしまうと、酸素含有量が少ない方から1種→4種となっており、その順番で 引っ張り強さは上昇するが、伸び、絞りは低下します。

純チタン JIS 1種の引っ張り強さは 270~410 (N/mm2) であり、一般構造用圧延鋼材の SS400 と変わりません。というか、弱いですよね。
SS400 と言うのは最初の S は Steel、次の S は Structure で、400は最低引張り強さを表します。純チタン JIS 2種で SS400 と変わらないくらいです。

これがチタン合金(例としてチタン合金中最もポピュラーな Ti-6Al-4V で考えます)となると、引張り強さだけ見ても 895 (N/mm2) 以上(JIS 60種)と、SS400 に比べるとずっと強くなります。

で、話を純チタン (2種) に戻しますと、引張り強さとは単位面積当たりの強さですから、SS400 材の製品と同じ強度を出すには同じ断面積(= 同じ大きさ)でよいわけです。このとき、純チタンの 密度は鉄の約6割ですから、実際にできたチタン製品の重さは従来品の約6割になります。

これが Ti-6Al-4V 製となりますと、半分以下の断面積にできます。
そうすると、設計形状にもよりますが、仮に断面積1/2としますと、長さは 1/√2 になるので、体積は約1/3になります。体積が1/3になれば、 密度が約6割なので、重さは元の品物の1/5にできるということです。
結構すごいですね。
この、強度の割りに密度が低い、という特性が「チタン合金は実用金属中最大クラスの比強度を誇る」といわれる所以です。 仮に製品と同じ重さでチタンでモノを作りたい、ということであれば、純チタン (2種) であっても体積を大きくできるわけですから、当然断面積も大きくでき、その結果強くできるということになります。

でも、大きく、分厚くして強度を得るというのは当たり前の話であり、それだったら何もチタンでなくても良いわけですよね?
やっぱりわざわざチタンで作るのなら、小さく、薄く、軽くしてなおかつ強度が上がる ということでなくっちゃ!ですよね。
となれば、チタン合金を使いましょう。チタン合金はあなたのその期待にこたえてくれます。
※表は横にスクロールできます。
傘をチタンで作ると・・・?

めったに曲がらない。錆びない。駅のホームでスイングの練習ができる。体にいい。などなど(笑)
では、実際にチタンやチタン合金が(主に)強度を目当てに使われている例を見て見ましょう。
ジェットエンジン、深海用耐圧殻、ねじ・工具、自転車、車椅子、タービンブレード、コンロッド(ピストンとクランクシャフトをつなぐロッド)、エンジンバルブ、アウトドアグッズ いろいろありますね。

ただ、ずーっと見ていくと、あることに気がつきます。それは、チタンを使うのは強度だけを求めてのことではないということです。たとえばジェットエンジンその他のタービンブレードは、強度のほかに軽さも必要とされる部材です。高速回転するタービンブレードが重かったら・・・ブレードがばらばらに千切れ飛ぶという恐ろしいことにもなりかねません。

深海洋耐圧核も、耐食性は当然要求されますし、重いとそれと釣り合いを取るための浮力を稼ぐ体積が要求されてしまいますので、軽いということも重要な要素なのです。

工具等は、軽いということが作業者の疲労低減に非常に重要です。自転車や車椅子も軽量化が大変重要なことは言うまでもないことです。コンロッドやエンジンバルブについても、軽量化が非常に重要なポイントになります。 コンロッドやエンジンバルブについて、少し詳しく見てみましょう。

ガソリンエンジンは、皆さんがご存知のとおり、非常な高速で回転します。6000rpm なんてざらでしょう。が、6000rpm って、1分間に6000回転回るっていうことですよね? ということは、1秒間に100回まわるってことですよね?ということは、エンジンバルブは1秒間に50回、コンロッドにいたっては1秒間に100回往復運動するということになります。

良くこんなスピードで動きますよね。
こんなパーツですから、 軽い方が「コンロッド等を動かすのに費やす力」が大幅に少なくてすみます。それらを支える部分も面積を小さくできるので、小さく薄く作ることができます。ということは、摩擦も減ります。

その結果、エンジンは爆発で生じたエネルギーを あまりロスせず前進等に使うことができます。
また、車体の中で最重量パーツであるエンジンが軽くなれば、それを支える構造部分も強度を減らすことができますし、ブレーキをかけたときに良くとまります。

前後の重量比も改善される ので、取り回しもしやすくなります。
う~ん、いいことずくめですね。

ですが、軽ければなんでもよいというものではないということは当たり前です。
最低限の強度が要求されるので、チタン合金がもってこいなのです。

ただし、チタンには耐摩耗性が悪いという弱点があります。そこで、他の金属とこすれあう部分には耐磨耗処理(モリブデン溶射など)が施されています。 他にも、強度を落とさずに軽くできるということがメリットをもたらす事例は数多くあると思います。 それに、チタンで作れば、耐食性など、その他の 価値ある特性がついてくるのです!
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